中古住宅の流通が小さかった日本 — その歴史的背景
日本の住宅市場は長らく新築中心で、中古流通の割合が欧米より小さいと指摘されてきました。戦後の住宅政策・税制・住宅観からその背景を歴史的に解説します。中古市場の今を理解する助けになります。
著者: 47ESTATE編集部 / 公開: 2026-09-19 / 更新: 2026-09-19
欧米では住宅取引の多くを中古が占めるのに対し、日本は長らく新築中心の市場だと指摘されてきました。この違いは国民性だけでは説明できず、戦後の歴史が積み重ねた構造によるものです。
出発点は圧倒的な住宅不足
敗戦直後の日本は数百万戸規模の住宅不足を抱え、住宅政策の至上命題は「とにかく戸数を増やすこと」でした。住宅金融公庫による持ち家取得の融資、公営住宅、日本住宅公団という戦後住宅政策の三本柱は、いずれも新しく建てることを支援する仕組みです。量の確保を最優先した時代の政策が、新築中心の市場構造の土台を作りました。
「家は建てるもの」を強めた条件
・住宅の質の急速な変化 — 戦後に大量供給された住宅には質の低いものも多く、また耐震基準や設備水準が改正のたびに向上したため、古い家は「性能が劣るもの」と見なされやすくなりました ・木造住宅の税務上の耐用年数の短さなどが、建物価値を早く減価させる評価慣行と結びつき、「建物は20年程度で価値がほぼゼロ」という市場の常識が定着していきました ・スクラップ・アンド・ビルドの経済 — 建て替えは住宅産業の需要を生み、経済成長とも整合的でした ・中古の品質を見極める仕組み(インスペクションや履歴情報)が長く未整備で、買い手が中古を安心して選びにくかったことも大きな要因です
転換点はゆっくりと
状況が変わり始めたのは、住宅数が世帯数を上回り、空き家の増加が社会問題化してからです。国は「つくっては壊す」社会から「いいものをつくって、きちんと手入れして、長く使う」社会への転換を掲げ、住生活基本法(2006年)や長期優良住宅の制度、既存住宅インスペクションや安心R住宅などの仕組みを整えてきました。
歴史を知ると今が見える
中古流通の小ささは、政策・税制・情報の仕組みが作った歴史的な構造でした。逆に言えば、仕組みが変われば市場も変わり得ます。実際、リノベーション文化の広がりとともに、中古を選ぶことは特別な選択ではなくなりつつあります。住宅市場の「当たり前」は、時代とともに動くのです。
市場の構造とその由来を知ることは、中古住宅を賢く選ぶための第一歩でもあります。
*既存住宅の評価・制度の最新動向は、国土交通省の公表資料でご確認ください。*
出典・参考資料
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最終更新: 2026-08-02